保守本流の復活を
この度の衆議院選挙、野党が分裂して自滅し、その結果自民党が敵失で公示前と同じ284議席と大勝しました。政治的なスタンスを表す言葉として、右の保守、左の共産・社会主義があります。リベラルとは、この左右の中間、中道を指す言葉です。小池百合子都知事が希望の党を立ち上げた時、ゴルフにたとえて、フェアウエーの右でも左でもなく真ん中が空いておりそこを目指すと発言し、多くの国民が期待しました。ところがすぐに、憲法改正に賛成するか、新安保法制を容認するかという踏み絵を用意し、踏まない者は排除するという手段に出たため、国民の期待が失望に変わり、希望の党は失速しました。
政党である以上、理念や基本的政策である程度の一致を求めるのは当然です。しかし、政権交代の相手である自民党は、右から左までいて、憲法一つとっても、改憲派から護憲派の宏池会(岸田派)まであります。民進党も右から左までいて、しかも旧社会党の人たちもいるので、確かに民進党の方が自民党よりも少し幅が広いのは確かであり、その為、憲法や原発など主要な政策でも、党内で決められないことがしばしばでした。
希望の党が候補者を選別したため、政策も自民党と大差がなくなり、第2自民党になってしまい、逆に排除された人達でできた立憲民主党も旧社会党の人も多く、自治労など官公労の応援を求めたため、第2の社民党になってしまいました。真ん中がすっぽりと空いてしまったのです。中道を名乗る政党・公明党がありますが、特定の宗教団体との結びつきが強すぎ、また平和の党と言いながら自民党の右傾化を阻止できていません。
そのため、投票したい政党や候補者が見当たらず、台風の影響もあり雨天となったことも重なり投票率も53,6%と前回に次ぐ2番目の低さとなってしまい、千葉県では、戦後初の50%を割れとなりました。非常に残念であり民主主義の危機とも言える状態です。
最近の世論調査でも、憲法改正、とりわけ9条の改正には、いまだ半数の国民が反対しています。憲法改正や新安保法制に反対の有権者が投票先を選ぼうとすれば、立憲民主党か社民党、共産党しかないことになり、おのずと投票所から足が遠のいたのは否めません。
民主制の下では、二大政党による政権交代が期待されます。保守の二大政党による政権交代も考えられますが、自民党と第二自民党の政権交代では意味がありません。かつて保革二大政党による政権交代も考えられましたが、東西冷戦の終結で社会主義陣営が敗北し保守化した社会では、社民・共産勢力で国会の三分の一の壁を破ることは困難な状況です。
そこで、自民党と競い合うもう一つの保守、リベラルな保守があります。1955年に結成された自民党は、戦争を推進しなかった人々を中心にした自由党と、公職追放が解除され政界に出た人々を中心にした日本民主党等の合併でできました。長い間前者は保守本流、後者は保守傍流と言われてきました。保守本流は、憲法を尊重し、先の戦争は間違っていたという歴史観、言論の自由を徹底し、軍備より経済・国民生活を重視する。戦後吉田茂に始まり、池田勇人、田中角栄、後藤田正晴等に引き継がれましたが、竹下登、宮沢喜一、橋本龍太郎等が死去するなどして、保守本流は急速に先細ったといわれます。
他方、国家主義的な保守傍流は、岸信介の後身福田赳夫の清和会から近年森喜朗、小泉純一郎等を輩出し岸氏の孫である安倍晋三首相の登場により大きな流れとなってきたのです。そこで、保守本流の健全な流れを現代にふさわしい形で取り戻すことが、今の政治に課せられた最大の仕事であると言われます。
憲法を守り防衛政策は専守防衛に徹する、集団的自衛権行使を否定し海外で武力行使をしないという真の保守本流は、自民党内では村上誠一郎元行革相だけで、他の政党にも僅かにいるだけ。絶滅危惧種と言われるほど国会内では議席を減らしましたが、国民の多くが求めているかつての保守本流、護憲リベラルの復活こそ必要なのです。