はじめに
護憲保守新党「平和の党」代 表
千葉県議会議員 西尾 憲一
「平和」とは何か
2年前、自民党のかつての保守本流・護憲派の流れを汲む一人として、平和憲法を守りたいということで、政治団体を立ち上げ「平和の党」と名付けました。その折に「平和」とは何か調べてみたことがあります。
一般的には、戦争のない状態を意味いたしますが、近年の平和学の発展、とりわけノルウェーのヨハン・ガルテュング博士の提唱によって、「平和」とは、戦争という直接的暴力がないだけでなく、飢餓や貧困、差別や抑圧などの構造的暴力もない状態、これを「積極的平和」と言うそうです。
戦争のない世界
11月来日されたフランシスコ・ローマ教皇は長崎で、「武力による平和は、真の平和ではない」と語っています。では、真の平和を実現するためにはどうすれば良いのでしょうか。
今こそ集団的自衛権ではなく集団安全保障、即ち国連を強化し国連常設軍を創設する国際安全保障体制を構築すべきです。私のような一地方政治家が発言しても信用されないかもしれませんが、同じことを自民党のしかも石橋湛山、宮沢喜一という二人の首相経験者が訴えていたのです。
今の国連は、第二次世界大戦の戦勝国を中心に組織され、しかも常任理事国として五大国が拒否権を持つなどして、戦後70年以上経った現在では不合理な点も多くなっています。そこで、国連に代わる新たな国際平和機構が考えられ、世界連邦もその一つです。国家間の武力衝突は国際公務員である連邦警察軍が処理をします。
世界連邦の創設
国連分担金の上位10カ国の中には、五常任理事国(米中英仏露)の他に、日本(3位)、ドイツ(4位)、イタリア(7位)、ブラジル(8位)、カナダ(9位)が入っています。そこに、人口が2位でGDPが6位のインドも含めて、この常任理事国でない6カ国とその他の国連加盟国が協力して、国連を発展的に解消し新たな国際機関・世界連邦を立ち上げる運動を進めていけば、五常任理事国も追随せざるを得なくなるのではないでしょうか。そして、例えば日本を含む合わせた11カ国を常任理事国とし、単独拒否権を認めず拒否権を行使する場合はもう一カ国の同意が必要とする。また、連邦総会の特別多数(例えば80%)があれば、拒否権を覆すことができるようにする。そうすれば、議事が滞り連邦が機能不全に陥ることは少なくなる。そして、常任理事国11か国以外の国から、連邦総会で連邦大統領を選任し、大統領は各大臣(長官)を任命する。
世界連邦警察軍の設置
世界連邦に加入するには、国連同様その国の財政力に応じた連邦分担金を負担するだけでなく、各国の軍隊、日本で言えば自衛隊の半分を連邦警察軍に提供する。連邦大統領の指揮命令監督のもとに置き、連邦公務員として国家間の武力紛争や、国境警備などの任務に従事する。
そうすれば、やがて強大な連邦警察軍が、参加国の安全を守ってくれるので、国ごとに軍隊を持つ必要がなくなり、全参加国が軍隊を持たなくなれば、連邦警察軍を大幅に縮小し、最終的には、僅かの連邦警察軍を有するか廃止も可能となります。
政治の究極目標のひとつは、人類の悲願である世界平和の実現です。そのためには、石橋湛山、宮沢喜一両元首相が訴えたように国連による集団安全保障の強化、国連常設軍の創設、さらには人類の理想である世界連邦建設に向けて、外交努力を重ねるべきです。
各国は自国を守る権限の一部を国際機関に委譲し、その傘の下に入ることによってしか、自国の安全を守れないというのが国連の安全保障観であり、連邦構想も同様の考え方に立つものです。
以上は、私の単なる夢物語ではありません。2005年には、衆議院で、「政府は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念のもと、唯一の被爆国として、世界のすべての人々と手を携え、核兵器等の廃絶、あらゆる戦争の回避、世界連邦実現への道の探究など、持続可能な人類共生の未来を切り開くための最大限の努力をすべきである。」と決議がなされています。また、2016年5月、参議院においても同様の決議が可決されているのです。
貧困と格差の解消
今我が国もまた、貧困や格差が拡大をしています。政治家たる者は、人々の痛みや苦しみに無関心であってはなりません。大変微力ですが、貧富の格差や官民格差、正規非正規格差や男女格差など格差是正・格差社会の克服に、これからも取り組んで参りたいと思います。
かつての自民党、とは言っても主に保守本流ですが、富の再分配を心掛け一億総中流社会を実現しました。日本型社会主義と揶揄(やゆ)されるほど公平な社会をつくりました。ヨーロッパ型の社会福祉国家を目指していたと言われます。ところが、近年とりわけ小泉内閣以降、新自由主義の名の下で、アメリカ型の競争社会を目指す方向に変わりました。派遣が次々と拡大され、今や、契約社員や派遣社員など非正規は、全就業者の4割近くまでになっています。
そして、労働者階級の中で正規労働者と非正規労働者の格差も大きくなっています。パート主婦を除く非正規労働者の就業人口の比率は実に約15%、930万人に及びます。正規労働者は約35%で平均年収は370万円あるのに,非正規は186万円と極端に低く、貧困率は逆に39%と高く、未婚率も男性がなんと66%と異常に高い。
我が国の喫緊の課題の一つは少子高齢化、人口減少の問題です。仕事が不安定なうえに収入も少ないため、結婚もできない。結婚しても子供を産み育てることができない。少子化にますます拍車をかけています。そして労働者不足だと言って、外国人労働者を拡大している。外国人労働者の人件費が安いため、非正規労働者の賃金が低く抑えられる。悪循環になっており、政府のやっていることは逆効果と言わなければなりません。
政治の使命
今、多くの子供たちが、単身女性が、母子家庭が、高齢者世帯が貧困で苦しんでいるのに、一部の富める者と公務員だけがぬくぬくと暮らす、そんな社会で良いのでしょうか。官民格差(1.6倍)を是正し、それによって捻出される財源で、高齢者福祉の充実や子育て支援にもっと予算を充てるべきです。
政治の使命とは何か。国を守り治安を維持するだけではありません。全ての人に、すべての人に人間らしい生活を保障するところにあります。一人でも多くの方に幸せになって頂くために政治があります。
政治は弱者のためにある(橋本龍太郎元首相)。「平和の党」は、日本国憲法の個人の尊厳・人格の尊重ということを考え方の根本に据えて、高齢者や障害者など社会的弱者にも配慮した自由主義社会の実現、国の発展と国民の幸せ、地球環境の保全と世界平和のために、全力を尽くして参ります。
あの素晴らしい保守本流をもう一度
少し前までの日本は、憲法を大切にして戦争のない平和な国、そして世界に貢献。一億総中流と言われるほど格差のない社会。時の権力に対して自由にものが言えた国民や報道機関などがありました。
しかし、ここ十数年、特に安倍第2次内閣が成立してからは急速に日本が変わり始めています。そして、自民党も名前は同じでも、かつての自民党とは全く異なるものになってしまいました。その変質が望ましい方向への変化なら嬉しいのですが、事態は全くの逆です。戦後の自由で民主的で平和な社会が徐々に突き崩されています。戦前のように、貧富の差が激しい、そしてものも言えない暗い軍事国家に成りはしないか、多くの国民が懸念し始めています。権力が暴走しているのではないかという危惧も国民に広がっています。
今ここで、誰かが、そして一人でも多くの人が声を上げ、保守本流の健全な流れを現代にふさわしい形で取り戻さなければ、日本が、そして国民が大変な事態になってしまいます。あの素晴しかった保守本流が元気だった時を思い起こして頂くと同時に、再び何としても実現しなくてはなりません。その一心で、「平和の党」を立ち上げました。
異常に立ち向かう「まっとうな異端児」が求められているとも言われます。 私は、今や国会でも絶滅危惧種とされている保守本流こそ日本の、いや世界の進むべき、あるべき姿であると確信しています。そこで、宮沢喜一元首相の考えをベースに、私の政治の師ともいうべき田中秀征元経済企画庁長官の解釈も交えて考察してみました。
与党も野党も期待できない
もっと根本には、与党も野党も期待できないからです。大企業や業界団体の支援を受けた政党・自民党や、大労組や公務員組合の支援を受けた政党・立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党では、本当に市民・国民のためになる政策を打ち出すことができないからです。
例えば、多くの国民が、それこそ6割から7割もの国民が脱原発を望んでいるのに、電力会社や電力労組の支援を受けた政党は、原発即時停止を打ち出せない。また、官民格差が1.6倍、正社員と比べても1.4倍もあるのに、公務員労組の支援を受けた政党は、公務員給与を削減しようとも言わない。
そして、格差解消の立場から、自民党以外の政党を支持したくても支持できる政党がないのが現実だからです。革新諸政党は大企業の、しかも正社員労組の支援を受けているため、非正規の方々や中小企業の従業員の声を充分反映していません。
真の国民政党
「平和の党」は、大企業の支援も大労組の支援も受けない真の国民政党、草の根政党として、声なき声にも真摯に耳を傾け、「草の根革命」草の根市民の市民による市民のための政治を実現してまいります。
これからもっと地方議員を増やして、国会にも代表を送り政党要件も取得したいと願っています。どうか皆様のご理解とご支援を、よろしくお願い申し上げます。
令和元年12月吉日