大企業大労組の支援を受けず

 今年5月に、民進党と希望の党が合流して国民民主党が誕生しましたが、政党支持率がそれぞれ1%程度でしたから、新党の支持率が2%になるかと思いきや、相変わらず1%未満で低迷しています。立憲民主党も、当初の勢いを失い6%前後という調査もあります。
 なぜ、一時は国民の支持を得て政権交代を果たした旧民主党勢力が、これほど情けない状況になっているのかについて、経営コンサルタントの大前研一氏が、6月15日付の週刊ポストで興味深い分析を行っています。以下、
 答えを先に言えば、自民党との「対立軸」が全く打ち出せていないからとのことです。もともと旧民主党は、各都道府県の都道府県庁がある「1区」で支持を集める都市型政党だった。農民、漁民、医者、建設業者など少数利益集団の利権を重視する自民党型の政治に対し、マジョリティである都市生活者の意見を代弁することが原点だった。この対立軸を旧民主党の人たちは忘れてしまったようだ。
 さらに根本的な問題は、最大の支持母体である労働組合=連合の存在だ。今や連合は資本家に搾取されている貧しい労働者の集団ではなく、日本の中では非常に恵まれている大組織の金持ち集団だが、集票マシンとしての連合に頼る限り、本当に国民のためになる政策や、自民党に対抗できる政策は出せない。たとえば、役人の数を削減すると言えば自治労が反対するし、AI時代は教師が半分でよいと言えば日教組とぶつかる。そういう中途半端な政党になった結果、対立軸が消滅してしまったのであると。

 私も前々から、大企業などの支援を受ける自民党は勿論のこと、連合をはじめとする大労組の支援受けている革新諸政党も、真の国民政党、草の根政党には成り得ないと考えてきました。例えば、6~7割の国民が、脱原発、原発即時ゼロを望んでいるのに、電力会社の支援を受けている自民党、電力労連の支援を受けている国民民主党は、原発再稼働を容認し、即時稼働中止を打ち出せません。また、自治労や日教組等の公務員労組の支援を受けている立憲民主党や社民党も、官民格差が1.4倍もあるのに、公務員給与の削減を掲げないし、掲げても実行しない。企業団体献金の禁止も実行できていない等。
 共産党も、共産党系の労働組合、全労連、自治労連、全教等の支援を受けており、公務員給与の削減には反対をしています。
 枝野氏が立ち上げた立憲民主党には、日本社会党の書記長だった赤松広隆元衆議院副議長ら旧社会党の議員も大勢いて、憲法9条改正反対、集団的自衛権行使反対という点では私と共通します。しかし、立憲民主党の前身である民主党時代、政権獲得前には国家公務員の総人件費を2割削減すると公約で謳っていましたが、政権を担ったら公約を実現しませんでした。労組の支援を失うことを恐れたからと言わなければなりません。国民より労組や公務員を優先する体質であることが明らかとなっています。
 2017年12月28日に発表された立憲民主党基本政策を見ると、「公務員の労働基本権を回復し、労働条件を交渉で決める仕組みを構築するとともに、職員団体などとの協議・合意を前提として、人件費削減を目指します。」と書いてあります。
 しかし、元財務官僚の高橋洋一嘉悦大学教授も、夕刊フジ(1月16日)で、「そうなれば、公務員の労働基本権の制約からくる不利益を解消するための人事院は不要となり、公務員給与の人事院勧告もなくなり、労働条件を労使交渉で決めることになる。その結果、公務員給与は上がるだろう。つまり、人件費の削減とはならないのだ。
 実は、この奇妙な3点セットは、旧民主党時代からあった。公務員のために前段を主張するが、国民一般からは不人気なので、前段と矛盾する後段の人件費削減を政策として掲げていたのだ。公務員組合と一般国民の双方に「いい顔」を見せていたのだ。これが立憲民主党にも引き継がれている」と批判しています。
 今や貧困層は、2,000万人を超えると言われます。正社員と非正規という働く人の間に分断ができ、その溝を埋める役割を労働組合は果たせていません。革新諸政党も労組の支援を受けており、格差解消の立場から支持できる政党がないのが現実です。格差解消に本当に取り組む政治勢力が求められています。