元首相の伝言 国連常設軍の創設を

 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、はや1年3か月になろうとしている。しかし、収束の目途もなく各国を巻き込んで長期化の様相を呈し、さらに激化も懸念されている。今必要なことは一刻も早く停戦し、罪もない多くの市民や兵士、ロシアの兵士の命を救うことである。

 現在日本の広島では先進7ヶ国首脳会議が開催されている。足並みをそろえてウクライナを軍事支援し、経済制裁などロシアへの圧力を強めようとしている。日本も、両国を仲裁して停戦協議に動くのではなく、戦争当事国の一方に全面的に肩入れしている。
 他方、中ロは軍事演習などの協力強化で一致し連携を強めており、中国からロシアへの武器供与の可能性も指摘されている。
 分断と対立が深まるだけであり、戦況が更に悪化すればロシアとNATOが直接対決するヨーロッパ戦争に発展しかねない。
 人類の悲願である世界平和を維持するにはどうすればよいのか。人類の知恵が試されている。

 日本の英智ともいうべき自民党の二人の元首相が同じことを訴えている。石橋湛山と宮澤喜一である。
 政界を引退していた湛山は、1968年「日本防衛論」で、「世界に対しては、国連を強化し、国際警察軍の創設によって世界の平和を守るという世界連邦の思想を大いに宣伝し、みんながそれに向かって足並みをそろえるよう努力する以外に方法はない」と述べている。
 また宮沢は、1991年総理になる半年前、月刊誌に「国連の常設軍が創設されて、イラク軍がクウェートに侵攻したような事態に対して、国連の意思により国連の指揮の下に出動し、世界の平和と秩序を回復する。そして、平和憲法を持つ日本はその推進者として各国の先頭に立つべきだと信じる」と述べている。
 今こそ集団的自衛権に代わる国際機関による集団安全保障体制を構築すべきと考える。

 元首相が提唱した国連常設軍の創設も、常任理事国の一国でも反対すれば実現できない。ウクライナ問題でも安全保障理事会は機能不全に陥った。単独拒否権制度がある限り、国連は半永久的に抜本的改革を出来ない事になる。
 そこで、常設軍創設に賛同する国々で、今ある国連の1インチ横に新しい国連を創設し移行する。即ち国連を脱退し新国連に加盟して頂く。
 新国連は、①敵国条項を撤廃する。②安全保障理事会の常任理事国を従来の五か国に、人口や国内総生産、国連分担金などを考慮して、インド、ブラジル、ドイツ、イタリア、そして日本を加えて10ヵ国とし、10年毎に見直す。③常任理事国には単独拒否権を認めず、2ヵ国以上が共同して拒否権を行使しなければならず、④総会で8割以上の国々が賛成すれば議案を決議できる。⑤事務総長は非常任理事国から選出することや、他の組織は継承する。

 国連常設軍が創設されても全ての国際紛争が解決されるわけではないが、大幅に減ることは想像に難くない。
 例えばロシアによるウクライナへの侵攻。第三国から構成される常設軍にロシアと良好な関係にあるインドやトルコ出身の兵士も参加すれば、ロシアも手を出しにくい平和のバリアーを築くことができ停戦と和平に向けて対話を促すことができる。

 政治の使命とは何か。国を守り治安を維持することだけではない。すべての人に、人間らしい生活を保障するところにある。一人でも多くの方に幸せになって頂くために政治がある。
 世界は戦争や紛争だけでなく、地球温暖化等の環境問題、飢餓や貧困、パンデミック、食料やエネルギー等人類共通の課題に苦しんでいる。人類の危機に一丸となって協力し立ち向かう必要がある。
 私の構想も試案の一つとしてご検討いただき、より良い国際機関となるよう、そして近い将来EUヨーロッパ連合のような世界連邦に発展することを心から願っている。

 

                       平和の党代表
                       千葉県議会議員 西尾憲一