職員給与増額条例に反対
12月20日、本会議の最終日、職員給与増額条例に反対する討論を行いました。
議案第11号、職員給与増額条例の反対討論を行います。
我が国の経済が長期停滞していると言われて久しいわけですが、その要因として、イノベーション(技術革新)の停滞と共に格差拡大が挙げられています。イノベーションには基礎研究と教育が重要ですが、格差是正には政治のリーダーシップが求められます。
国税庁は毎年9月末に、民間給与実態統計調査を発表しています。それによると平成30年は、平均給与は年額441万円であり、そのうち正社員のみでは504万円。他方千葉県職員はと言いますと、711万4千円。国税庁発表は全国平均ですので、本県の場合はもう少し高いかと思いますが、それでも官民格差が約1.6倍、正社員と比べても1.4倍もあります。
何故恐ろしいまでの官民格差があるのか。事実上大企業のしかも正社員の平均給与で公務員給与を決めており、民間の給与実態を正しく反映していないからです。また、公務員正確には官僚が公務員の給与を決めていること。そして、議会も、自分達の報酬を多くしたいがために、納税者の声を聴かずチェック機能をはたしていないからと言われます。実際、日本人の平均年収は世界で20位前後であるのに対し、国会議員の報酬は世界一高い。千葉県議会議員の報酬も、ドイツやイギリスの国会議員の1.5倍です。
今なすべきことは、この官民格差や正規非正規格差、男女格差や貧富の格差など格差是正・格差社会の克服ではないでしょうか。
格差が拡大すれば全ての人が不利益を被る事実も知るべきです。犯罪が増えるだけでなく生産性も低下します。能力のある人でも非正規の単純労働ばかりさせられてしまう。また貧困な家庭に育つ子供たちは、進学することができず、その能力を伸ばすことができない。こうして人的資本が不足し、経済成長率も低下してしまいます。OECD(経済協力開発機構)は、日本が1990年から2010年の間に、格差拡大がなければGDP成長率は5.6%も上昇し23.1%に達していたと推計しています。
3日前、世界経済フォーラムは、各国の男女格差(ジェンダーギャップ)を調べた「男女格差報告書」を発表しました。日本の順位は、今回調査対象になった153か国中なんと121位、イタリアや中国、韓国よりも下でした。賃金格差が広がるなど、経済分野の順位がほぼ横ばいであったうえに、政治分野で9月の内閣改造で女性閣僚が1人だったことなどが影響したとのことです。本県は、都道府県で唯一男女共同参画条例がありませんが、本県は条例を必要としないほど女性の社会参加が進んでいると言えるでしょうか。
9月6日、厚生労働省は、世帯ごとの所得格差に関する2017年調査の結果を発表しました。格差を示す指標・ジニ係数は、過去最大だった14年調査からわずかに改善しましたがほぼ横ばいで、依然高水準で格差が縮まらない実態が浮き彫りになっています。そして、収入がなく老後生活を年金に頼る高齢者世帯は増加しており、今後格差が拡大に転じる可能性もあると言われています。世帯ごとの当初所得の平均額をみると、全体では年429万2千円、65歳以上の高齢者世帯では、僅か100万4千円とのことです。
いわゆる「就職氷河期」に、大企業はこぞって新卒採用を抑制しました。そのため、就職活動はうまくいかず、非正規の仕事を転々としてきた人が約370万人と言われます。
9月県議会で私は、県としても格差を是正し公平な社会をつくるため、就職氷河期世代を正職員として採用することを求めましたが、前向きの答弁をいただけませんでした。しかし、その後和歌山県や多数の市で、採用を打ち出し、本県でも鎌ヶ谷市が採用を発表。遂には、国までもが、来年度3年間で30万人民間で正社員として採用するよう予算措置を講ずるだけでなく、国家公務員として採用する旨を先月発表しています。本県も職員給与を上げるのではなく、正職員としての採用を優先すべきです。
議会で職員給与増額条例が提出されるとき、合わせて議員報酬増額条例も提出されるのが通例かと思いますが、今回は、職員条例だけとなっています。これは、察するに、9月の台風15号などで亡くなったり、家屋が損壊するなど県民に多数甚大な被害が発生したからだと思います。そして、知事も初動対応の遅れなどの責任を取って、ご自身の給与減額を表明されています。なお、昨日発売された週刊文春に、9月11日の空白の6時間に、あろうことか芸能活動に励んでいたと報じられていますが、本当だとしたら大問題です。
では、副知事や部課長など執行部に責任はなかったのでしょうか。知事が自ら動かなければ、部下たるものは、ただ知事の指示を待つだけでなく進言をすること、また言動が間違っていれば諫めることも務めのはずであり、責任を果たしていないと言わなければなりません。今回の条例は、主に期末・勤勉手当いわゆるボーナスだけの増額ですが、県民の被災も併せて考えると増額すべきではない。これらの引き上げで約18億5千万円にもなります。それを被災者の救援にこそ充てるべきであると考えます。
高すぎる公務員給与の削減は、私だけでなく、日本維新の会も先の衆参の選挙で掲げていました。そして、立憲民主党の前身である民主党も、政権獲得前には国家公務員の総人件費を2割削減すると公約で謳っていました。しかし、政権を担ったら公約を実現しませんでした。公務員労組の支援を失うことを恐れたからでしょうか。
今は亡き自民党の橋本龍太郎元首相は、「政治は弱者のためにある」と良く語っておられました。政治の使命とはないか。国を守り治安を維持することだけではありません。全ての人にすべての人に人間らしい生活を保障するところにあります。一人でも多くの方に幸せになって頂くために政治があります。今や貧困層は、2,000万人を超えると言われます。富める者がますます豊かになり、持たざる者はますます貧しくなる。そんな社会でよいはずがありません。正社員と非正規という働く人の間に分断ができ、その溝を埋める役割を労働組合は果たせていません。正社員労組の支援を受けた政治家も同様です。知事が、格差解消に向けて真剣に取り組むことを切望して、本条例に反対致します。