県議の海外視察ビジネスクラスは違憲

 6月8日、千葉県監査委員事務局に住民監査請求を行い受付けされました。60日以内に監査結果が公表されます。結果または勧告に不服がある場合、住民訴訟を提起することができます。 

 請求の要旨 

  千葉県民が飛行機でアメリカ西海岸に行く場合大多数がエコノミークラスであるだけでなく、県内でも家庭が貧しくて修学旅行に参加できない子供達が多数いるというのに、千葉県議会議員は税金を使って豪華な大名旅行ならぬ大名視察。県職員は課長も含めてエコノミークラスなのに、議員はビジネスクラス。ビジネスクラスの航空運賃はエコノミークラスのなんと4.9倍、約5倍です。一人当たりの差額は780,450円。これに参加議員数15名をかけると11,706,750円。これだけあれば県内の小中高校生を何百人修学旅行に参加させることができるでしょうか。 
 議員に対する費用弁償(航空賃)の支給根拠規定は、千葉県議会議員の議員報酬等に関する条例第5条ですが、憲法14条1項(法の下の平等)、15条2項(全体の奉仕者)、25条(生存権の保障)に違反しているので無効と解します。したがって、知事は今年1月20日から26日までの日間アメリカ視察に参加した議員にエコノミークラスとの差額を返還請求すべきです。  

 ロサンゼルス・サンフランシスコ間は全員エコノミークラスなので、航空運賃を仮に最低の5,200円とした場合、議員は成田・ロサンゼルス間とサンフランシスコ・成田間は共にビジネスクラスで一人当たり981,250円、職員は課長も含めて共にエコノミークラスで200,800円で差額は780,450円。格差は、なんと4.89倍、約5倍にもなります。 

 以下理由を詳述します。 

 14条1項(法の下の平等)違反 

 憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定し、社会的身分による経済的関係の差別を禁じています。
 平等は自由と並んで近代憲法の基本原理の一つです。日本国憲法は平等原則を定め、特権的な制度を禁止することで平等を徹底しようとしました。本条により人々は権利として平等を主張することができます。社会的・経済的不平等を是正して実質的平等を実現することも現代国家の重要な役割のひとつとなっています。 

 社会的身分とは、社会へのかかわり方によって生じる違いのことであり、非公務員と県議会議員、県職員も該当します。
 県民が例えばアメリカ西海岸に飛行機で行く場合、大多数はエコノミークラスです。県の職員も課長を含めて皆やはりエコノミークラスです。ところが議員は運賃が約5倍のビジネスクラス。この差は何でしょうか。議員はそんなに偉いのでしょうか。議員は職員と共に県民に奉仕する公僕であり、支配者ではありません。
 
同じ県民、その前に同じ人間であるにもかかわらず差が大きすぎます。また同じ公務員であるのに格差が余りにも酷過ぎます。議員と職員は、役割を異にしても共に千葉県の発展と県民の幸せのために奉仕している仲間、公務員です。極端な差を付けるべきではありません。したがって、憲法14条の法の下の平等原則から、県議、地方議員の贅沢・ビジネスクラスの利用は許されないと解します。特権的な制度を禁止することで平等を徹底しようとした憲法の趣旨(14条2項)からも同様です。
 どうしてもビジネスクラスを利用したい議員は差額を自己負担すればよいのです。年間一人当たり480万円も出ている政務活動費で海外視察をする場合も同様です。県民の87%が高過ぎると思っている議員報酬等約1,500万円を充てるべきです。  

  なお、宿泊料は一人一泊当たり議員は25,700円、職員は22,500円で格差は1.14倍です。私は個人的には、これとて差をつけるべきではないと考えますが、社会通念上多少の格差は許容されており違憲とまでは言えないと解します。この平等は、事実上の差異を考慮して法律上違った扱いが許される相対的平等です。人は皆違うのですから、それぞれの個性に着目して違った扱いになるのは当然ともいえます。しかし、どのような違いに着目してどのような違った扱いを認めることが合理的なのかの判断はそう簡単ではありません。しかし、2倍未満でなければ、即ち2倍以上ならば合理的範囲を超えるものとして違憲と解すべきです。2倍以上の場合は複数人が飛行機に搭乗や宿泊が可能となるからです。 

15条2項(全体の奉仕者)違反 

 憲法15条2項は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と規定しています。
 すべての公務員は国民全体の利益のためにその職務を行なわなければならず(全体の奉仕者)、特定団体の利益のために行動してはなりません。そして、公務員はその地位を利用して自らの利益を貪ってはならず、全力を尽くして国民に奉仕しなくてはならないことは当然です(勿論解釈)。 
 投票によって選ばれた議員によって制定された民主的な法律・条例ではあるが、議員が自分たちのことを議員自身で決めるとどうしても利益相反行為 、すなわち県民に不利益になる行為、御手盛りになりがちであり、すべて民の税金から支払われます。自治体の運営は、地方自治の本旨に基いて(第92条)、住民自治すなわち住民の意思に基づいて行なわれます。これは手続きが住民に選ばれた議会によるだけでなく、内容も住民の意思を尊重したものでなければならない。県民は、議員の贅沢まで負託している訳ではありません。 

 公務員の究極の使用者は国民であるから、贅沢を排し無駄をなくして可能な限り財源を国民の福利すなわち幸福と利益に充てなくてはなりません。海外視察は、ビジネスクラスを利用しなくてもエコノミークラスでも十分できる事です。 
 地方自治法も第2条第14項で、「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定しています。したがって、エコノミークラスとの差額を返還すべきものと解します。 

 25条(生存権の保障)違反 

 第25条は、20世紀になって、福祉国家の理念の下に、社会的経済的弱者を保護し実質的平等を実現するために保障されるようになった社会権の原則的規定です。1項で生存権を保障し、2項でその実現のための国の義務を定めましたが、単に政治的道義的義務を定めたのではなく私たちの人権としての要求に応える法的義務です。 

  1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定しています。 
 しかしながら、国民、本県では県民すべてが健康で文化的な生活を営んでいると言えるでしょうか。
 例えば、子供の貧困が言われて久しい。6年前、子供たちの実に6人に1人が貧困生活を余儀なくされているということで大変胸を痛めたわけですが、その後若干改善され今は7人に1人ということになりましたが、それでもまだまだ多いのが実情です。 
 二つだけ例を挙げますと、満足に食事ができるのは学校給食だけで、学校給食が長期間ない夏休みが終わると、体重が減ってしまっている子供がいます。これで果たして健康的な生活と言えるでしょうか。 
 今一つは、中学生の娘に新しい下着を買ってやることができないため、よれよれの黄ばんだ下着で修学旅行に行くことをためらった娘は結局、修学旅行を欠席せざるをえなかった。制服や修学旅行については、就学援助制度がありますが限度額があります。きれいな下着やパジャマを揃えられない。お小遣いも1万円なんて無理。惨めな思いをする位ならと、旅行に不参加。孤立感を深め、いじめの原因になることもあるといわれます。 
 そこで、貧困のため旅行に参加できない子供には特別な補助をしてでも行かせてあげたいものです。一生の楽しい思い出となるはずの修学旅行に、クラスの中でただ一人参加できない生徒の辛さ、惨めさには余りあります。授業の一環ならなおさらのことです。 

 また、2項では「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定していますこれは、国家だけでなく自治体も国の一翼を担うものとして、努めなければならない義務です。今や貧困層は全国で2,000万人を超えると言われます。県民の中にも未だ貧困で苦しんでいるものが多数いるというのに、議員の贅沢が許される訳がありません。
 議員の海外視察の財源は、県民の皆様が額に汗して必死に働いて納めた税金です。悲しい辛い思いをする子供達をなくすのが先です、議員の贅沢よりも。全ての人に、すべての人に人間らしい生活を保障するのが政治の使命ではありませんか。まさに憲法25条に規定するところです。因って、25条にも違反すると解します。