議員の海外視察中止を

 第1号議案、令和2年度一般会計予算案について、反対討論をさせていただきます。 概ね賛成ですが、問題は議員の海外視察で、コロナウィルスの影響で見送りになりましたが、中止にはなっていません。
 過去の事例を調べてみると、問題点が何か所かあります。
 一つは、以前から行われていました海外視察、平成10年を最後に一度中止になりました。その理由は県の財政事情が悪化したからとのことですが、確かに県債残高が約1兆8千億円でした。ところが15年振りに平成26年から復活したわけですが、財政は好転していません。県債残高は3兆213億円と約1.7倍もふえています。令和2年も当初予算で3兆655億円もあります。
 二つは、平成25年度に復活した当初予算は1千万円で、ほぼ同額がその後2年間続きましたが、平成28年度から渡航先がイギリスということもあってか3倍に膨れ上がり来年度まで3060万円台が続いています。平成29、30年度は東南アジアですから、いったん減額になっても良さそうなのにならない。それどころか、昨年本県は台風や洪水で甚大な被害を受け視察を自粛すべきにも関わらず決行している。既得権化が甚だしいと言えます。 

 三つは、参加不参加が政党ではっきりしていることです。参加するのは、自民党、立憲民主党、国民民主党、それに保守系と思われる無所属議員、参加しないのは、公明党、共産党、社民党、市民ネットワーク、それに革新系と思われる無所属議員。私は、自民党のかつての保守本流・護憲派の流れですので、中道に近い保守ですが、一度も参加したことはありません。

 非常に残念なのは、公明党の議員が参加していないのに、立憲民主党や国民民主党の議員が参加していることです。
 4年前、私は政務活動費を使って世論調査会社に依頼して、職員給与や議員報酬と議員の海外視察についてアンケートを実施したことがあります。渡航先はイギリスでしたが、必要だと思う人8.6%、必要だと思わない人77.3%、分からない14.1%でした。働いている人の大半は反対だということです。
 立憲民主党も国民民主党も、資本家に搾取されている貧しい労働者の味方ではなくなったのでしょうか。大企業のしかも正社員の労働組合や公務員労働組合だけの味方になってしまったのでしょうか。両党には、非正規雇用の方々や中小企業の労働組合のない従業員の声は届いていないのでしょうか。
 公明党だけでなく立憲民主党や国民民主党の議員が参加を見送れば、党としては自民党だけが参加することになり、世論の批判を浴び、再び中止になる可能性もあるのです。両党とも、働く者の声の代弁者としての矜持・誇りがあるならば、是非とも再考をしていただきたいと思います。

 最後に、議員はビジネスクラスなのに、職員は課長も含めてエコノミークラス。この違いは何でしょうか。議員はそんなに偉いのでしょうか。
 私共議員などの特別職を含めて、公務員のことを古い言葉で「公の僕」と書いて「公僕」と言います。英語では「パブリックサーバント」訳して「公の使用人」。県民の皆様にご奉仕するのが私達の仕事です。議員と職員では役割は異なりますが、みな等しく県民のために尽くしたいと頑張っている仲間ではありませんか。極端な差を付けるべきではありません。

 6年前、子供たちの実に6人に1人が貧困生活を余儀なくされているということで大変胸を痛めたわけですが、その後若干改善され今は7人に1人ということになりましたが、それでもまだまだ多いのが実情です。一つだけ例を挙げますと、
 中学生の娘に新しい下着を買ってやることができないため、よれよれの黄ばんだ下着で修学旅行に行くことをためらった娘は結局、修学旅行を欠席せざるをえなかった。制服や修学旅行については、就学援助制度がありますが限度額があります。きれいな下着やパジャマを揃えられない。お小遣いも1万円なんて無理。惨めな思いをする位ならと、旅行に不参加。孤立感を深め、いじめの原因になることもあるといわれます。
 そこで、貧困のため旅行に参加できない子供には特別な補助をしてでも行かせてあげたいものです。一生の楽しい思い出となるはずの修学旅行に、クラスの中でただ一人参加できない生徒の辛さ、惨めさには余りあります。授業の一環ならなおさらのことです。 

 議員の海外視察の財源は、県民の皆様が額に汗して必死に働いて納めた税金です。県内でも家が貧しくて、修学旅行に参加できない子供達が多数いるというのに、自分たちは税金を使って豪華な大名旅行ならぬ大名視察。恥を知りなさい、恥を。悲しい辛い思いをする子供達をなくするのが先でしょ、議員の贅沢よりも。全ての人に、すべての人に人間らしい生活を保障するのが政治の使命ではありませんか。
 どうしてもビジネスクラスに乗りたいという方は、エコノミークラスとの差額を自己負担すべきです。それよりも、地方議員の場合、経済や文化交流など課題は多少あるにせよ、国会議員のような防衛や外交問題を扱うわけではありません。どうしても現地に行って外国の施設や制度を調べたいというのであれば、年間一人当たり480万円も出ている政務活動費を活用すべきです。それで足らないと言うなら、県民の88%が高過ぎると思っている議員報酬等約1500万円を充ててもよいではありませんか。
 議員の海外視察を中止して、不要となる3000万円余りは、県内の貧困で修学旅行に参加できない小・中・高校生の旅費の一部に充てるべきです。よって、第1号議案に反対致します。
 大変生意気なことを申し上げましたが、当選7回、今年70歳、古希を迎えます高齢者の議会を愛するが故と思ってお許し頂きたいと思います。御清聴誠にありがとうございます。