消費再増税反対 他に財源有り

 安倍首相は、来年10月から消費税率を10%にすると発表しました。財政を健全化し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化は重要だと考えます。しかし、消費税は逆進性が強く、消費税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなります。また、税金の無駄遣い(議員定数、官民格差)や他にも財源(金融資産税導入、法人税)があること。さらには、来年は景気循環が下降局面に入り、五輪バブルの崩壊や米中貿易戦争で景気が悪化するという悪条件も重なることを考えると、10%を撤回し5%に戻すことも検討すべきと考えます。
 元財務官僚の高橋洋一嘉悦大学教授も発言しているように、増税論者は財政再建のために増税が必要だという大義名分を唱えるが、実は、財政再建のために必要なのは、増税ではなく経済成長です。この点からみても、成長を鈍化させる過度の増税は国民経済に悪影響で、既得権者の利益にしかならないことが明らかです。8%への増税でアベノミクスの腰が折られている中でさらに増税となれば、最悪の場合、日本経済はかつての不況に戻ってしまう危険性もあります。10%への増税は中止すべきです。
 さらに、目下の円安でモノの値段が上がっている中にあって、増税を延期しても焼け石に水でしかないのもまた事実です。特に弱者、貧困層の生活は大変厳しいことを考えると、軽減税率を導入して、せめて食料品等だけでも5%に戻すべきと考えます。慢性デフレのきっかけは、1997年4月からの消費税増税だったと言われています。政府が税をとってから弱者に配るよりは効率的な経済対策になります。
  そもそも制度設計に問題があると言わなければなりません。初めて3%の消費税が導入されたのは1989年で、5%の増税されたのは1997年。わずか2年時で4兆円の税収増の見込みが逆に4.4兆円の税収減となり、GDP成長率も2%低下しました。3%から5%に上げるのに8年かけ、さらに8%にするのに17年かけているのです。8%から10%に上げるのにわずか5年半というのは、あまりにも短すぎ無理があると言わなければなりません。
 消費税の増税を先送りすれば、日本経済を悩ます財政問題が悪化するという声も多く聞こえますが、その心配はないと考えます。消費税1%は2兆円の税収効果があると言われています。つまり、消費税をさらに2%上げなければ、4兆円の税収が失われ、食料品などの軽減税率によって、さらに数千億円税収減となるのもまた事実です。一方で、本来課せられるはずであった4兆数千億円の税負担がなくなり、その分が消費に回るのもまた事実です。景気が回復して企業が儲かれば法人税収が上がるし、賃金が上がれば所得税収も上がります。税収全体が著しく落ち込むわけではありません。
 消費税を10%にして「失われた20年」をさらに30年、40年と延長させてしまうのが良いのか、それとも再増税を中止し食料品等を5%に戻し1年でも早く景気を回復させるのが良いのか、結論はおのずと明らかです。消費税全体を再度5%に戻すべきであるとの専門家の声もあり、検討する価値があると考えます。一度5%に戻して景気を良くしてから、1%ずつ景気に配慮しながら上げていくのが最善と考えます。

国の財政状況は悪くない 
 消費税には、国の財政状況が関連してきます。国の借金総額が30年度末に883兆円になると予想されているからです。しかし、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、「相変わらず、バランスシート(貸借対照表)の考えが抜けており、『資産』を無視して『借金』だけを見ている」と批判しています(夕刊フジ2017年12月28日)。そして、
 政府のバランスシートを作ってみると、それほど国の財政状況は悪くはない。徴税権と日銀保有国債を合算すれば、資産が負債を上回っていることも分かる。
  また、高齢化による社会保障費増大の問題についても、実は世界の社会保障は、ほとんどが保険方式であるが、徴収は税当局が行うことで効率性を高めている。歳入庁の設置が世界標準だ。日本でも歳入庁がないことによって、数兆円の徴収漏れがあると指摘されているが、設置の動きがないのは不思議だと。